引越し業者

クロネコヤマトの引越会社はアートの子会社になるのか?

アート ヤマトHCを連結子会社に2021年8月2日、アートコーポレーション株式会社(アートCO)とヤマトホールディングス株式会社(YHD)は、YHD傘下のヤマトホームコンビニエンス株式会社(ヤマトHC)の発行済普通株式の 51% をアートCOに譲渡することに合意したと発表しました。

引越事業を行うヤマトHCはアートグループホールディングス株式会社(アートグループHD)の連結子会社になります。

株式譲渡契約 2021 年 7 月 20 日
本株式譲渡  2022 年 1 月 17 日

2020年10月に持株会社同士であるアートグループHDとYHDが引越し市場における協業の検討を開始することが発表されておよそ半年。

アートCOがヤマトHCの引越事業を買収するということになりました。

このページは、2021年10月現在の情報で記載しています。

アートとヤマトが協業検討
アートとヤマトが協業?引越し市場に目に見える変化となるか

このページは、2020年11月現在の情報で記載しています。 2020年10月21日、アートグループホールディングス株式会社とヤマトホールディングス株式会社が、引越市場における協業の検討を開始することを ...

続きを見る

ツレ
なになに?!
買収?
ヤマトの引越しがなくなって、アートになるの? 
管理人
落ち着いて。そんなことは発表されていないよ。

引越業者としてアートとヤマトを「1社」と「1社」として捉えていたとしたら、クロネコヤマトの引越しがなくなるのかと、そんな気がしてしまうかもしれません。

このページは、これからアートとヤマトの引越しがどうなっていくのだろうかということを考えながらつらつらと述べたページです。

 

まずはこの件に関わる会社のことから。

アートもヤマトも、運送業・引越し業だけをやっているわけではありません。

アートグループとヤマトグループのイメージ

引越事業が主軸のアートは「アート引越センター」の名前の方が馴染みがあるでしょうか。

物流、物販、保育事業などを行うアートグループの中で、引越事業を行うアートCOに、

「クロネコヤマトの宅急便」のヤマトグループの中の、引越事業を担うヤマトHCの株式の 51% を株主であるYHDが譲渡すると。

ツレ
え?え?え?
管理人
この図で見たらわかるかな?

アートグループとヤマトグループのイメージ

ツレ
えぇ?
これを見て何をどうわかれと?

それでは改めて、

アート引越センター(アートCO)は、運送業界で初めて引越し専門を掲げた「引越し屋さん」です。

アートの紹介

引越事業のほかにも国内物流事業や物販事業など、「あったらいいな」を形にしてきた引越専業の大手です。

引越事業を行っている会社はアートコーポレーション(アートCO)で、関連会社がいくつかあるなかで、持株会社のアートグループHDが傘下に収めています。

クロネコヤマトの引越しは、宅急便など各種輸送に関わる事業を行うヤマトグループの中で行われている事業のひとつです。

ヤマトの紹介

ヤマトといえば宅配便業界最大手。

引越し業界の中で見ると売り上げ上位に入る大手兼業業者のひとつではありますが、ヤマトグループの中でのシェアは大きくはありません。

YHDが収める傘下の関連会社の中で、ホームコンビニエンス事業を行うヤマトHCが行っています。

 

このヤマトHC、2018年に引越料金の不適切請求問題が公になり、引っ越し受注は全面停止、2019年1月には行政処分、事業改善命令が出されました。

2019年の9月に個人の単身者向け限定で引越事業が再開され、対象エリアの拡大や法人向けにも受注を再開してきていましたが、業績は芳しいものではなかったようです。

「業界を取り巻く環境~業界の業績~」2020年度決算説明会

出典:「業界を取り巻く環境~業界の業績~」2020年度決算説明会  サカイ引越センター

薄緑色のB社がヤマトHCです。

2018年に急激に下降したのち、回復の傾向が見られません。

2003年からの推移が確認できる資料もありました。

【SPEEDA総研】引越業界の現状と課題をみる 2016/10/08-引越し業界の売上高推移

出典:【SPEEDA総研】引越業界の現状と課題をみる 2016/10/08
この記事の著者 / 編集者
Nakagawa Nozomi
NewsPicks
閲覧日:2021年9月26日

アートの成長も見てとれますが、常に追いかける立場のようです。

そんなヤマトHCを抱えるYHDと、引越し業界のリーディングカンパニーでありながら長年業界での売り上げ1位に届かないアートCOを抱えるアートグループHDが協業していたのですね。

アートグループとヤマトが協業を検討していました

ヤマトは、2019年以降荷物の少ない単身者向けの引越サービスを再開していたものの、家族向けの荷物の多い引越サービスは再開に至っていません。

アートは引越しを「サービス業」として発展してきたこともあり、荷物の多い家族の引越しに強いといえます。反面、荷物の少ない利用者にとっては割高感が否めませんでした。

荷物の少ない単身者向けに業界の各社が提供している「カゴ車単位で荷物を送る割安な単身者向けのサービス」(混載便・単身パックなど)を展開しておらず、1件の引越しにトラックを1台貸切る(チャーター便)スタイルのためです。

 

協業の検討によってどんな変化が起こるのだろうかと思っていたら…

アートがヤマトHCを連結子会社化

ツレ
ヤマトがアートに売却すると…?
管理人
そう。
発表では、”株式の譲渡”という表現が使われているから、売却とか買収という表現を使ったものかどうか悩ましいのだけど、アートCOがヤマトHCの株式の過半数以上を取得するということで、買収するんだね。

以降、ヤマトHCの経営をアートCO(アートグループHD)が主導していくことになるのでしょう。

気になる株式の譲渡額は公表されていません。

『ヤマトグループ連結決算概要』2022年3月期 第1四半期の参考資料では、業績に与える影響として

• 株式譲渡に伴い、2022年3月期連結決算において、約35億円の特別損失を計上する見込み

とありました。

損失を出してでも売却したい状況であったという表面上のことしか読み取れる知識はないのですが、業務提携などの形では成しえないであろうWin-Winを目指しての決定だったのだろうと推察します。

 

ツレ
ウィンウィン?なれるの?
管理人
どうだろうねえ?

WEBで公表されている情報をもとに作成しました。

引越し業界の業績2021

ハトのマークの引越センター(全国引越専門協同組合連合会)は2019年12月期の情報で、アリさんマークの引越社の情報は一番新しくて平成25年 273億円という売り上げでした。2021年3月期のヤマトの売上よりも上位になるのですが、情報が古いので3位以下の順位は不明としました。

サカイと日通は引越事業としての売上が公表されていますが、アートは単体として、ヤマトはホームコンビニエンス事業としての売上なので、引越だけでなく大物家具の配送や屋内外のあれこれサービスなどの売り上げも含まれています。

そのようなデータで作った表ですので、一概に、今回並べた数字でアートがヤマトを子会社化することで業界1位に躍り出るということを言い切れません。

(業界1位 サカイの連結売上 1003億円 に肉薄する2位に上り出るという見方もあるようです)

アートにとっては業界1位の座が見えてきたともとれますし、低迷していたヤマトは市場でシェアを取り戻せるようになるかもしれません。

わかりませんけれどね。

 

ツレ
ヤマトがそんなに低迷していたなんて…
荷物の少ない人の引越しはクロネコヤマトでっていうイメージがあったんだけど、時代が変わったのかしら?
管理人
そういうイメージを持っている人もいるかもしれないね。世代によるかもしれないけれど。

ヤマトHCの業績悪化がなければ、アートの子会社化もなかったのではないかと考えます。

2018年、ヤマトHCの引越料金不適切請求問題が明らかになって以降の沿革を確認してみたら何かわかるのではないかと思ったのですが、WEBサイトにある会社案内の沿革では、2018年までの表記しかありませんでした。(2021年9月17日閲覧)

そこでWEBサイトの「お知らせ」をもとに、勝手に2018年以降の沿革を作成してみたのですが、10月2日に確認したところ、2020年までの沿革がさらりと追加で紹介されているではありませんか。オリジナルがあまりにもさらりとしていたので、詳細は勝手に作った筆者独自の沿革で確認していきます。

 

ヤマトHC 沿革(WEBサイトの情報を元に作成)

2018年/
平成30年
6月法人契約の引越料金で過大請求していたとの報道。
7月法人契約の引越サービスに不適切な過大請求があったことを発表。
8月法人・個人すべての引越サービスの新規受注を休止。
2019年/
平成31年/
令和元年
1月行政処分、事業改善命令を受ける。
事業停止・車両停止の処分を受け、引越し以外のサービスも一時利用出来なくなる。
9月個人の単身者向け引越サービスを、一部地域に限って受注開始。
2020年/
令和2年
2月
6月
7月
単身者向け引越サービスの対象地域を順次拡大。
9月法人契約の単身者向け引越サービスを受注開始。
10月アートグループホールディングス株式会社とヤマトホールディングス株式会社が、引越市場における協業の検討を開始。
11月Yahoo! JAPANと連携し、フリマアプリでの大型商品を取り扱う「おまかせ大型配送」サービスを開始。
2021年/
令和3年
4月クロネコおまかせレンタルサービス新規受付終了
5月リユース品の販売・不用品買取サービス終了
6月本社移転
7月単身者向け引越サービスの利用規約改定
7月アートコーポレーション株式会社と株式譲渡契約を締結
10月「快適生活サポートサービス」の一部新規受付終了。(予定)
2022年/
令和4年
1月本株式譲渡
発行済普通株式の51%をアートに譲渡し、アートグループホールディングス株式会社の連結子会社となる。(予定)

2018年の引越サービスの全面休止以来、再開までにおよそ1年かかっています。

2019年春の引越し繁忙期の再開は間に合わず、9月に新たなサービスとして単身者向けのみ再開しましたが、利用可能エリアも限定的でした。

その後エリアは徐々に拡大し、法人社員向けの受け付けも再開したものの、家族向けの引越や会社の移転など荷物の多い引越サービスの再開を迎えることなくアートの子会社となることが発表されました。

こうして見てみると協業の検討開始以降、株式譲渡契約を締結するに至る前から、取り扱う事業の整理が行われていたようにもみえます。

「クロネコおまかせレンタルサービス新規受付終了
「リユース品の販売・不用品買取サービス終了
「快適生活サポートサービスの一部新規受付終了。(予定)」

引き続き何が残るかというと、単身者向けの引越し「わたしの引越」と大型の家具や家電の配送を行う「らくらく家財宅急便」が浮き上がってきます。

荷物を運ぶ運送屋さんという姿に戻っていくかのようです。

株式譲渡契約の締結が発表されたプレスリリースの「今後の展開」には、

今後も関係を強化し、両社が培ってきた技術力と品質を融合させ、お客さまに「感動」をお届けできるサービスの提供を通じて、より良い暮らしの実現に貢献してまいります。

とありますので、ヤマトが輸送事業に焦点を合わせていくように見えていても、ただの運送屋さんに戻ろうということではないでしょう。

”より良い暮らしの実現”には「運ぶ」だけではないでしょうからね。

ヤマトHCの株式、51%と49%

ヤマトHDが株式の 49% を保有し続けることは、ヤマトブランドを残すことと、日本中に張り巡らせたヤマトのネットワークの重要性を感じさせます。

 

興味深いのがこの部分。

コロナ下で急成長した EC における大物家具・家電の配送をアートグループの新たな事業の柱と位置づけ、ヤマトグループのネットワークと、これまで YHC が培ってきた開梱・設
置、回収における高い技術力や優れた品質に、アートが持つネットワークを組み込むことで、さらに利便性の高い、高品質なサービスを構築していきます。

アートがヤマトHC(3期連続赤字)と関係を強化する目的がここにあるように見えます。

引越事業の中でさらにシェアを伸ばしていこうというよりも、大物家具・家電の配送分野で拡大していこうということなのではないでしょうか。

引越市場の規模は、少子高齢化に人口減少で今後現状以上に大きく成長が見込まれる市場ではありません。

引っ越し未満・宅急便以上の大きなサイズの宅配需要は、これからも拡大していくのかもしれません。

 

引越をサービス業とうたい家族の引越しに強みを持つアートと、グループのネットワークゆえになせる荷物の少ない単身者向けの引越しを行うヤマトの引越し市場での思惑の一致というよりも、もっと広い視野での互いのネットワークとノウハウを生かした成長戦略がありそうです。

おまけにとってつけたようなこの部分。

また、引越領域においては、アートが保有するノウハウとマネジメント力を活かし、YHC の引越事業を高度化してまいります。

引用:2021年8月2日 ヤマトホームコンビニエンス株式会社を対象とする株式譲渡契約の締結について

ヤマトHCが休止したままの家族の引越しサービスを再開するとなると、アートと顧客の取り合いになりかねないようにも思えますが、互いが築き上げてきたブランドイメージによって顧客の求める内容はそれぞれに違いがあるかもしれません。

取り合うことなくすみ分けるのか、弱い部分を補強することでよりサービスを充実させて新たな顧客を獲得していくのか。

業界トップのサカイが目指す関東圏でのシェアの拡大に対して、アートとヤマトでどれだけ対抗していけるのか。対抗ではなく、家具・家電の配送に活路を見出すのか。

これからの動向が楽しみです。

-引越し業者
-,