引越しの営業マンが訪問見積もりで置いて帰るのが見積もり書です。でも項目が多すぎて、どこを見ればいいのかよくわからないですよね。
見積もり書には引越し当日、作業員が運ぶ荷物や行う作業など、引越し全体を左右する重要なことが書かれているんです。
少し驚かせてしまうかもしれませんが、見積もり書に記載がない荷物を業者が積み残すというのは、引越しの現場で実際にあることです。
見積もり書に記載漏れがないかを確認することは、自分のイメージする引越しであるかどうかを確認することでもあります。
営業マンが訪問見積もりをしたのに荷物を積み残される・・・なんていうのは困りますよね。
そんなことにならないよう、このページでは見積もり書の見方について解説します。
引越しの見積もり書
引越しでは見積もり書=契約書=作業指示書となるケースも多く、利用者が押印やサインをしたものは契約が結ばれたものとして扱われることになります。
なので、複数の引越し業者を比較する段階では、訪問見積もりの際書類に押印やサインをすることは避けましょう。
作業指示書というのは引越し当日作業員が携行する、見積もり書の現場バージョンのことです。作業指示書に記載のない荷物を運んだり、記載のない作業は行うときは追加費用が請求されることがあります。
単身など小さな引越しの場合、訪問見積もりを行わずに契約をするケースもありますが、業者の担当者とやりとりしたメールを取っておく、契約書を郵送してもらうなど、約束と違う!といったことにならないよう注意が必要です。
口約束はトラブルのもと
訪問見積もりで営業マンが荷物を全部運んでくれると言ったから大丈夫だろう・・・などと勝手に思い込んではいけません。
「ウチは全部運びますよ。」
上のようにお客さんと営業マンとの間で交わされた口約束というのは、作業員としては知る由もありません。
作業員が指示書に記載されていない荷物を運ぶことや、作業をすることは基本的にありません。
作業指示書に記載のない荷物の運搬や作業はオプション作業となり、引越し当日行うのであれば追加費用が発生することになります。
トラブルの事例
- 1回ですべての荷物を運びきれずピストン輸送になり、追加費用が発生した。
- 積み切り契約になっていたため、大量の荷物を積み地に残された。
- 荷物リストに記載されていない家具があったため、追加費用が発生した。
- 家具類の吊り上げ、吊り降し作業が見積もりに含まれていなかったため、追加費用が発生した。
また梱包、解梱包サービスを利用する場合など、どちらがどこまで作業をするのかといったことを書面で明らかにしておかないと、現場で作業員とトラブルになることがあります。
引越しでは営業マンとの口約束は当てにならないと肝に銘じておく必要があります。
見積もり書の内訳
「あれ?この家具、リストにないな・・・。」など、見積もり書の記載事項について少しでも疑問に思う箇所があれば、営業マンに確認し書面にしておくということがトラブル防止につながります。
「大丈夫です。」、「やります。」といった営業マンの言葉を鵜呑みにせず、必ず書面にしておくというのが引越しの契約ではとても大切なことです。
見積もり書の内訳とチェックポイントについてご紹介します。
会社名
業者の所在地、電話番号、見積もりを担当した営業マンの氏名と携帯電話の番号も聞いておくと、何かあった際のやりとりがスムーズにいきます。
大手であれば気にしなくて大丈夫ですが、事業許可番号または認可番号が記載されているか確認しましょう。
引越し作業自体は運送会社でなくてもできるのですが、荷物を輸送して運賃を受け取るには運送事業者としての認可が必要になります。
引越し業者を名乗る運送事業者ではないモグリの業者もあるのです。
日程
引越し日と午前便、午後便またはフリー便であるかの確認をしましょう。
午後あまりに遅い時間では都合が悪い場合などは、しっかりとその旨を伝えるようにしましょう。
また長距離の引越しでは、転居先への荷物の搬入日についての確認と調整が必要です。
住所
現住所と新住所が間違っていないかの確認はとても重要です。
私の作業員時代には、見積もり書に記載された住所が間違っており、いくら探してもあるはずのない住所を半日探し回った経験があります。
転居先がアパートやマンションであれば、階数とエレベータの有無の記載も確認しましょう。階数とエレベータの有無は必要な作業員数を割り出すのに必須で、費用にも直結する重要な項目です。
荷物を積む場所がほかにもある2ヶ所積みや、降ろす場所がほかにもある2ヶ所降ろしなどは、絶対に記載が必要なものです。
運賃
使用するトラックの大きさ、台数などとともに引越しの基本料金が記入される項目です。
車両が往復して荷物を運ぶピストン輸送についても、運賃の項目に記載されることが多いです。
運賃には車両1台につき1名の運転手兼作業員の人件費が含まれます。
実費
作業員の人数と人件費(荷役費)、引越し当日作業員が現場で家具類の梱包に使う資材費、有料道路通行料などが記入される項目です。
車両1台につき1名の運転手兼作業員の人件費は運賃に含まれるため、それ以外の作業員の人数と人件費が実費となります。
また、事前に配達されたダンボールなどの梱包資材費については、実費に含まれません。
家具類の吊り作業や昇降機などの特殊車両を使用する場合、実費として計上されるケースが多いです。
養生
マンションや新築家屋への引越しの場合、ほかの住民との共用部分やエレベーター、住居の壁などを作業中に傷つけないよう保護する目的で、養生という作業が必要になる場合があります。
特に新築家屋への引越しの場合には 養生作業は必須ともいえる重要な作業です。私の引越し作業員としての経験から、新築家屋へ養生なしで荷物を搬入することなどはまず考えられません。
プラスチックダンボールや巻きダンボールといった資材を多く使い、作業に手間もかかることから費用もかさむのですが、この養生という作業については費用をケチってはいけません。
訪問見積もりで営業マンが「きちんと養生して作業します。」と約束したのであれば、見積もり書にも新築養生有りなどと必ず記載してもらうようにしましょう。
荷物リスト
引越し業者がなぜ訪問見積もりをするのかの理由のひとつが、運ぶ荷物を正確に確認するためです。
訪問見積もりのときにはなかった家具を、お客さんが引越し前に購入することもあります。
すると、見積もりでは積みきれるはずだったトラックの大きさでは積みきれない・・・なんてことにもなるわけです。
そのようなことを防ぐため、見積もり書の荷物リストに記載される家具のみが、引越し当日作業員が運ぶ家具ということになります。
見方を変えると荷物リストに記載のない家具は、引越し当日作業員に運んでもらえない可能性があるということです。
なので、家具と呼べるものはカラーボックスのように小さな物も、すべて漏らさず記入してもらうことが大切です。
また、大物家具優先や積み切りプランといった作業員の裁量に任されるプランでは、乗用車で運べないような大きな家具を積み残されないよう、運ぶ家具に優先順位をつけてもらうことをおすすめします。
記載漏れになりやすいもの
冬であれば使わない扇風機、夏であれば使わないストーブやコタツなど、季節用品は押入れなどにしまわれることが多く営業マンが見落としがちな荷物です。
小さなものだから大丈夫だろう・・・などと安易に考えるのはよくありません。引越しでは扇風機やストーブ、コタツも立派な家具のひとつに分類されるんです。
家の外に置くことが多い自転車も、営業マンに聞かれない限り忘れやすい荷物のひとつです。家族全員分の自転車などになると、かなりの物量になるため荷物リストへの記載は必須といえます。
作業内容
引越し業者とお客さんのどちらが何をするのかが作業内容です。主な項目として以下のようなものがあります。
大型家具類の梱包、開梱
よほど特殊なものでない限り、大型家具類の梱包、開梱、分解、組み立てといった作業は多くの業者で基本作業となっています。
中には家具付属の専用工具がないと分解できないものなどがあり、家具を購入した時の付属品は引き出しの隅にでも入れておくことをおすすめします。
大型家具類の梱包は引越し当日作業員が行うことがほとんどです。追加費用の必要ない標準サービスと思って大丈夫です。
食器など小物類の梱包、開梱
食器など小物類の梱包、開梱を業者が行う際は有料となります。いわゆる荷造りサービス、荷ほどきサービスと呼ばれるものです。
梱包のみ、もしくは荷ほどきのみといった、どちらか一方を選ぶことができる業者が多いです。
小物類の梱包、開梱サービスを利用した場合、費用の目安は1部屋1名の作業員で25,000円前後が相場となっているようです。
テレビ等の配線
コンセントを挿す、アンテナ線をつなぐ程度は無料で行う業者が多いですが、テレビとビデオデッキの配線などは有料となる業者が多いです。
多くの場合、テレビ台の下にビデオデッキを入れて、上にテレビを乗せて設置完了という作業になるでしょう。
荷物の搬入作業が終わった後に、お客さん自身でテレビ台を引き出して配線作業をするというのが一般的です。
パソコンの設置
パソコンをお客さんの指定する場所に置くところまでが一般的な引越し作業です。
パソコンとプリンターをつないだり、モニターやネット回線への接続などは有料のオプションサービスになります。
パソコンデスクにモニターと本体を置いたあと、位置調整をしたいというようなリクエストには作業員が応えてくれるはずです。
重たいパソコン本体を移動したいときなど、作業員が引き上げる前にお願いするといいでしょう。
エアコンの取り付け、取り外し
エアコンの取り付け、取り外しといった作業は有料のオプション作業です。自社で行う業者、提携業者に委託する業者、お客さん自身に手配を依頼するところに分かれます。
エアコン作業は引越し業者に依頼するよりも、お客さん自身で手配したほうが安く済むケースもあり、なじみの電気屋さんなどがあれば取り付けだけ、または取り外しだけお願いするというのも費用を抑えるひとつの方法です。
エアコンの取り付けには部屋の壁に穴を開ける必要があったり、配管の部品が必要になったり、現場で直接追加費用が実費で発生することがあることも頭に入れておきましょう。
ウォシュレットの取り付け、取り外し
電気工事士の資格を持つ作業員がエアコンの取り付け、取り外しやウォシュレットの取り付け、取り外しを行う引越し業者も増えています。
このような作業は有料のオプションサービスになりますが、引越し後すぐに使用できる快適さを考えれば、引越し作業と合わせて依頼するのがおすすめです。
ウォシュレットの取り付け、取り外し作業の費用相場は、それぞれ6,000~10,000円前後です。町の電気屋さん、ホームセンターなどの作業料金と比較して安いほうを選ぶといいでしょう。
照明の取り付けなど
コンセントロック式の吊り下げ照明などであれば、背の高い作業員にお願いすれば取り付けてくれるはずです。
各部屋に照明を運ぶというところまでが引越し業者の作業で、取り付けはお客さん自身が行うというのが一般的です。
配線工事が必要なシャンデリアなどは、ご自身で電気屋さんを手配するか引越し業者が提携する電気屋さんが作業をすることになります。
洗濯機の設置
洗濯機本体を運ぶだけというのが、基本的に引越し業者の作業になります。配線、配管といった作業は一般的にお客さん自身が行うものです。
中には無料で洗濯機の取り付け、取り外し作業を行う業者もありますが、多くの業者では有料のオプションサービスとなっています。
私の作業員としての経験から、配線は比較的簡単にできると思いますが、給水栓の取り付けと特に排水ホースの取り回しがひとりでは難しいかなという感じです。
洗濯機の種類別に取り付け、取り外し作業の費用相場を調べてみました。
洗濯機の種類 | 取り付け | 取り外し |
全自動 | 1,500円~ | 3,000円~ |
ドラム式 | 5,000円~ | 9,000円~ |
洗濯乾燥機(一体型) | 3,000円~ | 6,000円~ |
梱包資材
ダンボールやガムテープなど必要な梱包資材が無料の業者であれば、無料でもらえる枚数や個数と費用が無料であることを確認しましょう。
また洋服をたたまずに運べるハンガーボックスは、引越し当日に貸し出されることも多く、必要な個数が記載されていないと作業員がトラックに積んでこないというようなこともあります。
ハンガーボックスは当日レンタルなどと記載があるかの確認をしましょう。
無料であるがゆえに、こうしたところのチェックが甘くなってしまいがちですが、ダンボールやハンガーボックスもなくては困るものなので、必要な数が記載されているかの確認は大切です。
引越し業者が使う紙製のふとん袋は使い捨てなのですが、私の作業員としての経験からも、とても使い勝手のいいものです。忘れずにもらうようにしてくださいね。
付帯サービス
引越しの基本作業は荷物の搬出、輸送、搬入です。そのほかのエアコン脱着、不用品の処分、ピアノの輸送など引越しに付帯する作業はすべて有料のオプションサービスです。
付帯サービスについては引越し業者が自社で対応できるものとできないものがあり、対応できないものについては提携する専門業者に依頼するというのが一般的です。
自分の引越しに必要な付帯サービスと金額が記載されているか、頼んでいない付帯サービスが記載されていないかを確認しましょう。
家電の設置や不用品の処分などは、自分で安い業者を探すというのも引越し費用を抑えるひとつの方法です。
特記事項
引越しの見積もりでは、転居先については下見をしないのが一般的です。
なので、作業時間や必要な人員、費用について大きな影響を与える作業環境や条件がある場合には、事前に引越し業者に知らせておかないと引越し当日のトラブルにつながる恐れがあります。
見積もりと引越し当日の作業内容があまりに違う!といったトラブルにつながる作業環境や条件としては、以下のようなものがあります。
- 搬入に時間のかかる新築マンションへの一斉入居。
- 荷物の搬入の際、転居先にトラックが横付けできない。
- 荷物に著しい易損品(壊れやすいもの)がある。
作業環境によっては作業員を増員しなければならなかったり、運ぶ荷物によってはかける保険の種類が変わったりします。
スムーズな引越し作業のためには、営業マンにありのままを伝えることが大切です。
貨物保険
荷物の破損事故などがあった場合に適用される、貨物保険(運送業者貨物賠償責任保険)の補償限度額の確認をしておきましょう。
荷物の破損などがあった場合、貨物保険の補償限度額を超える補償はされないため、高価品などが多く不安な場合には荷主がかける引越荷物運送保険を検討してみましょう。
荷主がかける引越荷物運送保険は、業者に過失がない荷物の破損事故などにも適用される保険で、大手業者であれば扱っています。
引越荷物運送保険は運ぶ荷物の時価額に応じて保険料が変わるしくみになっており、時価額10,000円につき20円前後が保険料の相場です。
ただ、引越し業者の貨物保険で300~1,000万円程度が補償されることから、引越荷物運送保険をかけるという方は少ないです。
支払い方法
引越し費用の支払いについては、引越し当日作業前に集金するところ、荷物の積込完了時にするところ、すべての作業終了後に集金するところなどがあり、いずれでも問題ありません。
現金での扱いのほかにクレジットカード、振込、会社請求ができる業者もあります。
私の作業員としての経験では、荷物の積込完了時に集金する業者がもっとも多いイメージです。
引越運送約款
引越しの見積もりをするとき、営業マンは引越運送約款を提示する決まりになっているのですが、実際の現場ではキャンセルなどの重要な項目だけを営業マンが部分的に読み上げるといった形が多いです。
見積もり書の裏面に引越運送約款を印字している業者もあり、この場合には約款の提示が「あとで目を通しておいてください。」という営業マンのひとことで済むことになります。
引越運送約款は荷主と業者の間で交わされる、重要な取り決めについて記載されているものです。荷物の破損や紛失、キャンセルなどについての重要な項目だけでも目を通しておきましょう。
まとめ
引越しの見積もりで一番重要なのは、営業マンとの口約束はしないことです。
営業マンとの口約束は引越し当日作業員とのやりとりで、この荷物を運ぶ運ばない、営業マンがそう言った言わないといった作業のトラブルを引き起こすきっかけになります。
そうしたトラブルを防ぐには、営業マンとの約束事は口約束ではなく見積もり書に記載してもらうことです。
特に引越し業者とご自身のどちらが何をどこまでやるのか、運んでほしい家具がすべて荷物リストに記載されているかをしっかり確認することが大切です。
電話番号入力なしでOK!
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以上、『引越し見積もり書のチェックポイント!料金の内訳と注意点など』を最後までお読みいただきありがとうございました。
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