引越し現場の裏話

引越し業者トップが出向く芸能人の引越し!失敗できない理由とは?

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引越しをする芸能人

引越し作業員という仕事をしていると、ときに有名人、芸能人、歌手といった方の引越しを担当することがあります。

しかし、作業中に芸能人や歌手ご本人に会うことはなく、引越しを取り仕切るのはマネージャーさんというケースがほとんどです。

このページでは私が作業員として担当した、ある歌手の引越しについてお話します。

芸能人の引越し

芸能人や歌手といった高価な家具や調度品が多く、経済的に余裕がある方の引越しの受注がもっとも多いのは、運送大手の日本通運です。

日通には美術品や骨董品を扱う専門の部署もあり、私の働く中小規模の引越し業者などとは一線を画すサービスの提供をしています。

しかしなぜか時折、有名人、芸能人、歌手といった方の引越しが私の働くような会社にも舞い込んでくることがあります。

歌手の音楽事務所移転

今日は珍しく営業所の所長が、私たち作業員と同じトラックに乗って現場に向かっています。

クレームに敏感な所長が自ら出向くということは、訳ありで作業員がキレそうな現場か、高額で受注した失敗できない現場に違いないと思われます。

現場に向かう道すがら、作業内容について所長に聞いてみると、音楽事務所の移転に伴うレコードの一時保管ということでした。

レコードの梱包に私ともうひとりの作業員、所長と合わせて3人の作業員が必要ということは、おそらく相当な数のレコードがあるはずです。

しかも全梱包なので、かなり時間のかかる作業になることは確実です。

当時その方の名前を聞いてもピンときませんでしたが、日本レコード大賞を獲ったこともある歌手であることは後から知りました。

すでに亡くなってしまったのですが童謡、ニューミュージック、シャンソンなど幅広いジャンルを歌う歌手だったようです。

歌手ご本人と対面

都内某所、車通りのそんなに多くない幹線道路沿いにその事務所はありました。「○○○○音楽事務所」と歌手の名前がついた、お洒落な造りの二階建て一軒家です。

呼び鈴を押すと出てきたのは、身長180cmの私からするとかなり背の低い男性で、同性の私からしてもハンサムだなぁと思う方です。

部屋に通されて壁に貼ってあるポスターを見て気づきましたが、先ほど玄関に出てきたのは、なんと歌手ご本人であることがわかりました。

事務所にはご本人以外誰もおらず、「今日はよろしくお願いします。」と、とにかく低姿勢で礼儀正しく、こちらが恐縮してしまうほどです。

荷物を見せてもらい、3部屋に分けて整理されているレコードと、倉庫にあるコンサート機材も預かることになりました。

2トンロングのトラックも玄関前に横付けでき、レコードをダンボールに梱包していく作業が一番の大仕事でしょうか。

枚数で数えるとすれば、見当もつかないほどのレコードがあるように見えます。

ダンボール150箱分のレコード

3部屋分ものレコードを持っているということは、この歌手の方は歌うだけでなく、聴くのも好きなんだなぁというのがよくわかります。

所長ではないもうひとりの作業員は私よりも年上で当時30代半ばの男性ですが、「すげー!こんなのあるよー!」と、なかなか作業がはかどらない様子です。

自分の興味のあるジャンルのレコードなら作業の手も止まりそうなものですが、英語や何語なのかわからないジャケットのレコードばかりで、私と所長については黙々と作業をこなすだけです。

本が入ったダンボール箱ならいつもは2個3個重ねて運ぶことが多いですが、さすがに本用のダンボール箱にびっしりレコードを入れてしまうと、1個を持つのが精いっぱいという感じでしょうか。

最近はレコードを持っているお客さんが少なく、久々にレコードだけが入ったダンボールを運ぶことになりましたが、同じ容積でも本よりレコードのほうが圧倒的に重いのを実感します。

トラックへの積み込み作業は、梱包の終わったダンボールをとりあえず玄関前に溜めるだけ溜めて、3人で一気に運び出すという流れになります。

トラックへの積み込みも、重ねすぎるとレコードの破損が懸念されるため、高さ7分積みにして上にコンサート機材を積もうということになりました。

レコードが一体何枚あったのかはわかりませんが、持って行った本用のダンボール150箱をすべて使い切りました。

お昼は出前

普段はまともに昼食を取る時間がないことがほとんどですが、今日は荷物を営業所に持ち帰るだけの1日仕事なので、ゆっくり昼飯が食べられるんじゃないかと期待していたんです。

コンビニ弁当を運転しながら食べるとか、昼食抜きで1日終わるなんてことは私の会社では普通なんです。

ちょっとは期待していたのですが、「お昼は何がいいですか。」とお昼時に歌手ご本人から声がかかりました。歌手ご本人のお言葉に甘え、作業員3人分の出前を取っていただくことになりました。

こんな立派な事務所を構えるぐらいの歌手なので、マネージャーさんとか雑用をこなす人がいると思うのですが、引越し作業員のお昼の手配までしていただいて、とても恐縮してしまいます。

おそらく過積載

朝9時から作業を始めてお昼をはさみ、15時にトラックに荷物が積み上がりとなりました。まだ営業所に戻ってからコンテナへの積み替え作業が待っています。

本用のダンボールにびっしり本を詰めると、重さは大体10~15キロぐらいになります。これがレコードになると、持った感じ20キロ前後でしょうか。

持って行ったダンボール150箱を使い切ったということは、ざっくりですが重さ3トンはある計算になります。積んでしまったので遅いのですが、乗ってきた2トン車では過積載かもしれません。

案の定、首都高でハンドルがグイングイン取られます。スピードを抑えて慎重に運転しながら営業所に戻りました。

トラックから保管用のコンテナに積み替えるのも一苦労です。コレ、またトラックに積み替えて降ろしに行く日が来るんですよね・・・。

有名な歌手だった

現場から出発する前に、自分が知らないだけで実はすごい歌手なのかもと思い、作業着の背中にマジックでサインをいただきました。家に帰って母親に聞いてみると、その方は有名な歌手だということがわかりました。

その場で着ている作業着の背中に「サインお願いします。」じゃ、とても失礼だったかもしれないですね・・・。

芸能人などの引越しでは、本人と会うようなことはまずないもので、マネージャーあたりが出てきて高飛車な態度で色々注文をつけてくることが多いです。

ただ、芸能人などの引越しでは相場とかけ離れた金額を集金することも多く、芸能人つながり、歌手つながりの引越し依頼もあるため、引越し業者としては次につなげたいわけです。

でも、普段現場に出ない所長クラスに気張って作業されても、現場の作業員としてははた迷惑なんですよね。

作業中に芸能人と直接対面する引越しはこの1回だけですが、最後まで低姿勢で接してくれたこの歌手に、大物は違う!と感じずにはいられませんでした。

以上、『引越し業者トップが出向く芸能人の引越し!失敗できない理由とは?』を最後までお読みいただきありがとうございました。

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