「形あるものは壊れる。」ということわざもありますが、引越しというのは一度に多くの形あるものを移動する大変な作業です。
運ぶ荷物の量に比例して引越し作業員が家具にキズをつけてしまったり、壊してしまったりする確率は必然的に高くなってしまうことは否めません。
引越し業者に荷物を壊されてしまったり、失くされてしまったりしたとき、利用者はどのような対応を取るべきなのでしょうか。
すべての荷物がまったく無傷で移動されるためには、搬出、輸送、搬入という過酷な条件をクリアーしなければなりません。
階段があったり、輸送距離が長かったり、玄関から搬出、搬入ができなかったりといった作業の悪条件は、荷物の破損や紛失の確率をさらに上げる可能性があります。
引越し作業員として働いていた私の経験からも、すべての荷物を全く無傷で運搬することはきわめて不可能に近いという現実を知っています。
トラブルを未然に防ぐには
「キズは最初からついていた。」、「そんな荷物はなかった。」などと引越し業者と争うようなトラブルを避けるためには、以下のような方法が効果的です。
荷物の搬出時
荷物の搬出作業中に家具類のキズを引越し作業員が見つけたら、都度呼び出してもらうようにします。
家具類のキズを引越し作業員と一緒に確認するような流れを作っておくことで、キズをつけられた、キズはついていたといった無用のトラブルを防ぐことができます。
自身では気づいていなかった家具類のキズなどもあるものです。
荷物の搬入後
搬入作業が終わったら、業者が引き上げる前に引越し作業員と一緒に家具類をひと通り見て回ることをおすすめします。
搬出作業中に確認できなかったキズなどがついていたら、輸送中か搬入作業中に不手際があったということになります。
また、荷物がみつからない!といったことを防ぐには、業者が引き上げる前に車両の荷台が空になっているか見せてもらうのが一番確実な方法です。
私の作業員現役時代にも、荷物の降ろし忘れは何回か経験しています。
荷物事故が起きたとき
どんなに熟練した引越作し業員であっても、また正しい作業手順を踏んでいたとしても、家具にキズをつけてしまったり、壊してしまったりすることはあるものです。
引越し作業中に家具にキズがついたり、荷物が破損していることが分かった場合には、作業中もしくは作業完了後に作業責任者を呼んでその場で確認をしてもらいましょう。
修理や代替品、補償の詳細などについては現場の引越し作業員の一存では判断しかねる場合がほとんどです。
また、その場で引越し作業員を責めても解決には至りません。
どんな状況であれ、引越しは終わらせねばなりませんから、まずは引越し作業を完了させるようにしましょう。
その後、問題の解決について作業責任者、または業者の担当者と話し合っていくことになります。
補償について
引越し荷物の破損、キズ、紛失などに対する引越し業者の対応としては、修理できるものは修理、修理不可能なものについては時価額相応の代替品、または金銭によって補償することがほとんどです。
しかし、引越し費用または運賃以上の補償がされることはありません。
荷物の紛失に関しては、稀に引越し作業中の隙を突いた盗難などもあり、警察への盗難届けなどが必要になるケースもあります。
作業中に業者によって紛失されたと思っていた荷物が、引越し後の荷ほどき中に出てくるという利用者の勘違いも少なくありません。
補償の申告は3ヶ月以内に
引越し後、しばらくしてから家具のキズに気づいたり、荷物の整理をしていてダンボールの中の荷物が破損しているのに気づくといったケースもあるでしょう。
そういった荷物事故、荷物の紛失などに気づいた場合、引越し業者に補償を求めるには3ヶ月以内に申告する必要があります。
引越し業者は引越し後3ヶ月以内に申告された荷物の破損や紛失について、それらが業者側に起因すると認められる場合、1年以内に補償することが引越運送約款によって定められています。
トラブルの相談先
引越しのトラブルや補償の対応については、誠意的な対応をする業者がある反面、業者から一向に連絡がないなどの話も聞きます。
引越し業者の対応について、業者が取り合ってくれない、内容に納得がいかないなどといった場合には、以下のような第三者機関に相談するという方法もあります。
相談先 | 営業時間 | 電話番号 |
消費生活センター | 平日10時~12時、13時~16時 | 188 |
全日本トラック協会 | 平日9:30~12:00、13:00~17:00 | 0120-109-855 |
しかしながら、このような第三者機関には法的な強制力はないため、まずは引越し業者の担当者と感情的にならずに冷静に話し合うことをおすすめします。
引越し荷物の破損、キズ、紛失といった補償には、引越し業者の貨物保険適用範囲であるかどうかといったことも関係しており、解決には時間がかかるケースも少なくありません。
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